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うつ病などストレス性疾患の労災認定基準と安全配慮義務違反

うつ病  私自身が職場の長時間労働に悩まされてきた経験から、過重労働により精神や身体に健康障害(病気)を生じさせることに対する問題意識が強くあります。

 過重労働でストレス疾患を患い死亡または重度障害を負った労働者の家族らが、国を動かし、平成14年にストレス性疾患に関する労災認定基準(平成14年の厚生労働省通達の要旨)を勝ち取ったのだそうです。

 それ以来、発症前1ヶ月間の時間外労働100時間超または2ヶ月ないし6ヶ月平均の時間外労働が80時間超の場合は、労働災害と認められるようになりました。

産業医への助言指導の義務化などを追加し平成18年通達によりさらに強化されて現在に至っています。

平成24年1月には厚生労働省が精神疾患の労災認定新基準を全国の労働局に通達しています。

 業務に起因する災害は労働災害とされ、ケガに限らず病気もその対象となります。
 病気の場合、私傷病か業務災害か判然としないことが多いですが、ストレスに関する限り、業務に関連するストレスか仕事以外のストレスかの判断基準を、国はすでに通達によりチャートにして示しています。(平成11年9月15日労働省通達「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外認定の判断指針について」)

 上記通達の別表として「職場における心理的負荷評価表」があるので参考になると思われます。

☆☆☆平成21年4月6日に厚労省から発表された新しい労災認定基準では精神障害における労災の認定基準がさらに緩和されました。
見ると、新しく追加された項目として「職場におけるひどい嫌がらせ等による心理的負荷の反映」とあり、ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた場合は、強度Vになる、と書いてあります。解釈すると、ひどくない嫌がらせやひどくないいじめは強度U以下。ひどい嫌がらせやひどいいじめは強度V、暴行を受けた場合も強度Vということになる(くどくてすみません)。
また、違法行為の強要は強度U、達成困難なノルマが課された場合も強度Uであることが追加されています。
従来通り、退職の強要を受けた場合は強度V、会社の経営に影響する重大なミスをした場合も強度Vというのは変わりありません。
注目すべき記述があります。ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた場合の心理的負荷について、従来はたとえば上司からの嫌がらせ、いじめ等については「上司とのトラブルがあった」という項目で評価していたところですが、その内容や程度が業務指導の範囲を逸脱し、人格や人間性を否定するような言動が認められる場合には、ひどい嫌がらせ、いじめに該当するので強度Vが適当である、とあります。
しのづか似顔絵電話相談や面談相談を受けていますと、このケースに当たる場合がきわめて多いです。社長や上司から人格や人間性を否定するような言い方をされ、納得いかず、ひどい場合は精神疾患を罹患してしまった人が相談にみえます。
新しい労災の基準を適用すると、そのような言動があったために罹患したという事実が確認されれば、労災保険で労働災害の認定が得られる可能性が高いということです。
録音があればよりいいですが最低でもメモがあればいいです。とにかく事実を証明するものを取得することが大切です。労災の認定手続きは社労士のお得意の分野ですから、お近くの社労士事務所にご相談されることをおすすめします。福岡の方ならパートナーズへいらっしゃいませ!★★★

 労災と認定されたことが直ちに使用者の過失責任が問われることはありませんが、その傷病に関し安全配慮義務違反がある場合は、契約不履行責任による損害の全額を賠償する責任が出てきます。一定金額の賠償は労災保険がカバーしてくれますが、慰謝料は労災保険にはないことや死亡事故など逸失利益が莫大な金額になった場合は使用者が賠償することになります。

 これら昨今の過重労働問題に火をつけたのが、平成12年3月24日の電通事件に対する最高裁判決です。重要な判決ですので長文ですがその要旨をご紹介します。

(事件の概要)
Aは、平成2年4月1日、大手の広告代理店であるY会社に就職し、ラジオ局ラジオ推進部に配属され勤務していたが、平成3年8月27日、 自宅において自殺した。
Aの両親(X)は、Aは、Yから長時間労働を強いられたためにうつ病に陥り、その結果自殺に追い込まれたとして、Yに対し、 安全配慮義務違反または不法行為による損害賠償を請求した。

(判決の要旨)
「労働者が労働日に長時間にわたり業務に従事する状況が継続するなどして、疲労や心理的負荷等が過度に蓄積すると、労働者の心身の健康を 損なう危険のあることは、周知のところである。労働基準法は、労働時間に関する制限を定め、労働安全衛生法65条の3は、作業の内容等を特に 限定することなく、同法所定の事業者は労働者の健康に配慮して労働者の従事する作業を適切に管理する努めるべき旨を定めているが、それは、 右のような危険が発生するのを防止することをも目的とするものを解される。これらのことからすれば、使用者は、その雇用する労働者に 従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことが ないよう注意する義務を負うと解するのが相当であり、使用者に代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行なう権限を有する者は、使用者の 右注意義務の内容に従って、その権限を行使すべきである。」
(中略)
「企業等に雇用される労働者の性格が多様のものであることはいうまでもないところ、ある業務に従事する特定の労働者の性格が同種の業務に 従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでない限り、その性格及びこれに基づく業務遂行の態様等が業務の 過重負担に起因して当該労働者に生じた損害の発生又は拡大に寄与したとしても、そのような事態は使用者として予想すべきものということが できる。しかも、使用者又はこれに代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行なう者は、各労働者がその従事すべき業務に適するが否かを 判断して、その配置先、遂行すべき業務の内容等を定めるのであり、その際に、各労働者の性格をも考慮することができるのである。 したがって、労働者の性格が前記の範囲を外れるものでない場合には、裁判所は、業務の負担が過重であることを原因とする賠償責任請求に おいて使用者の賠償すべき額を決定するに当たり、その性格及びこれに基づく業務遂行の態様等を、心因的要因として斟酌することはできない というべきである。」

 この判決で最高裁は、会社側に過失責任の損害賠償として、因果関係のある全損害の賠償を命令しました。

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