退職勧奨
解雇ではなく合意退職を促されたら「考えさせてください」と言おう
最近の使用者は、労働者にはっきりと解雇を通告することは稀です。
解雇通告をしたら解雇予告手当30日分を支払わなければならないので、そのお金をケチろうとする使用者が時々います。そのようなケチな例はともかく、多くの場合が、まともな解雇理由がないために、解雇ではなく合意退職に持ち込もうとするのです。
言い方はいろいろあるようです。やんわりとじわりじわりと責めたて、自分から辞めるように仕向けます。
その説得に誠意を感じ、退職してもよいかなと考え、また数か月分の補償金を支払うとの約束をしてくれるようなら、応じてもよいケースですが、ここで退職の意思表示をしてはいけません。
少なくともいったん自宅に持ち帰り、家族又は友人に相談したり労働関係の無料メール相談を利用するなりし、納得してから返事するべきです。
ですから、最初の説得を受けた場面では「考えさせてください」、と言うようにしてください。 これは鉄則だと考えてください。
そして2回目以降の話し合いのときには録音した方がよいでしょう。ICレコーダをバッグか何かにいれておきましょう。退職強要や脅迫から身を守るための正当防衛だとお考えください。
心の準備なく、情報収集の時間もなくいきなり会社から「辞めてもらえないだろうか」と退職勧奨を受けた場合に、すぐに冷静な判断ができる人が存在するでしょうか?
使用者側は事前に貴方に話す内容を検討し、言い方も検討し、いかにその日に「わかりました」と辞表を書かせるかを練りに練ってきます。
一方、貴方は「そんなことをいきなり言われても」「そんなことで辞めさせられる謂れはない」「会社がそこまで言うなら自分が至らなかったからなのか」という気持ちが交差します。そして、「明日からの生活をどうしよう」という不安感にも苛まれます。
そんな心理状態で、職場に残るか辞めるかの重要な判断が冷静にできるわけがありません。とにかく、「考えさせてください」と言うに限ります。
使用者が、「今すぐ返事がほしい。そうでないと解雇せざるを得ないがそれでもいいか」と言ってくることが多い。その場合でも、「考えさせてください」を貫きます。
退職勧奨を拒否したからという理由で解雇は不可能です。
また、仮にあなたに若干のミスや規則違反があったとしても解雇は「解雇するけどいいか」、などと被解雇者の同意を求めるものではないのです。そのように言われても、ただ無言を通してください。
あるいは「辞表を出せないのだったら給料を下げるぞ」と言われるケースも多いはずです。その場合でも、「考えさせてください」と答えます。
実際に切り下げをしてきたら、そのように同意のない賃金切り下げは無効と決まっていますから異議を申立ててそれでも元に戻さないときには出るところに出ればいい。
「辞めてくれないか」、という言葉に対しては「考えさせてください」と言ってください。あるいは「辞めろ」「明日から来なくてよい」と言われたら「それは解雇通告ですよね。文書で通知してください」と言ってください。「文書なんか出さん」と言われたら、「それは労働基準法違反です。出してください」と一歩も引いてはいけません。文書がないとあとで必ず解雇通告はしていない、と嘘を言います。ですからここは一番肝腎なところです。文書をくれなければ翌日以降出社し続けてください。
なお、解雇通告書は受け取ってよいのですが、解雇予告手当を受領したら解雇に異議がないと判断されますので、注意してください。解雇通告書面に書かれた解雇の理由をよく読んで、異議がある場合には解雇予告手当を受け取らないようにしてください。
本当に、真意で了解していない限り、「はい」や「わかりました」と言ってはいけません。まして文書で「退職同意書」「退職届」「退職願」など一切提出してはいけません。 文書で退職の意思表示を示した場合は、まず後日の撤回は無理だと思ってください。集団で相手方から脅迫的に書かされた場合を除き、覆すには困難を極めます。
また、口頭で「はい」や「わかりました」など同意を意味する言葉を発した場合でも、使用者側はその言葉を待っていたわけであり、後でそれは真意ではなかったとかそういう意味ではいと言ったのではないと主張しても良いのですが、使用者側もなかなか折れず紛争が長期化します。
合意退職に持っていこうとする使用者側の思惑に乗せられないようにしなければなりません。退職勧奨に同意せざるを得ない場合もあるかもしれませんが、せめて補償金の支払いを約束する文書をもらってからでも遅くありません。

■「退職勧奨」とは使用者側からの労働契約解約の申し入れ。これに応じ本人が退職願を提出すれば、合意退職となる。一般的に「やめてくれないか。」「はい、わかりました。」のパターン。一方「解雇」は使用者側からの一方的な労働契約解除の意思表示。これを行うには厳しい法的制限がつく。




