労働者のための労働相談所

未払い残業請求及び不当解雇慰謝料請求事件

"あっせん"が打ち切られ地裁に提訴。結果的に"あっせん"の場でこちら側が要求した金額の倍額の解決金で和解したケース

<あっせんを求める事項>

時間外労働割増賃金1,200,000円及び不当解雇の慰謝料500,000円の支払を求める

1. 申請人Aは、平成18年9月1日に入社し平成19年11月19日に退職するまでの間に、被申請人の代表取締役B及び被申請人の部長Cの指揮命令下において1日8時間を越える残業を少なくとも合計309時間、また、土曜日における法定外休日労働を少なくとも合計320時間行った。しかし、それら超過勤務労働に対する時間外労働手当は、申請人の在職中も、退職後も未だ一切支給されていない。

2. 申請人Aは、建築内装工事業を主たる事業とする被申請人Bの事業所において顧客対応業務を担当していた。事務所において、顧客からの受注業務と、日々進捗する工事現場の状況を書面で顧客に報告する業務であった。現場の状況で不明な点は現場従事の従業員の帰社後にしか訊ねることができず、そのため、恒常的に残業をせざるを得なかった。

3. 申請人Aは、被申請人の部長であるCから、仕事を6時で終わらせようと考えてはいないだろうね、とか、社内文書や議事録作成は6時以降にするように、と言われており、残業を明示的に指示されていた。

4. 申請人Aが入社時に締結した雇用契約書において、労働時間について月曜日から土曜日まで午前9時から午後6時までとあり、私は異議ありません、と申請人が記載しているが、労働基準法第13条に「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。」とある。したがって、労働基準法は強行法規であることから、労使の合意に係わらず1日8時間労働、週40時間労働が法定労働時間であり、それを超過する労働時間について全て割増賃金の支払義務がある。

5.平成19年10月●●日、申請人Aは、Cから部署替えによる配置転換と、基本給27万円から固定給15万円+歩合給という賃金切り下げを提示され、合意しなければ解雇と言われた。

6. これに合意しない旨を伝えると、関連会社である株式会社M社への転籍及び賃金切り下げを提示され、前記5の条件とこの条件とのいずれかを選ばなければ解雇する、と伝えられた。申請人は、賃金切り下げは労働者の同意がなければできない、と主張したがCは、会社側は従業員の同意がなくても賃金切り下げができる、と言って譲らなかった。

7. 平成19年10月●●日、申請人AとCとの話し合いにおいてCは申請人Aに対し解雇ではなく自己都合退職を求めてきた。

8. 10月●●日に、前記2条件に合意しなければ解雇だと言っており、本件解雇は不当であるにも拘らず、自主退職を求めることは被申請人Bの事業所において雇用に関する公的助成金を受給するための方便であり、申請人Aに不当に自己都合退職を強要するものであった。

9. 申請人Aは、退職勧奨が強要によるものであり、これを拒否したいところであったが、話し合いがこじれたため、これ以上被申請人Bの会社に在籍するのは困難であることを思い知り、退職届に「不本意ながら平成19年11月19日をもちまして退職いたします」との文言を記載し、11月10日に提出し受理された。

10. 本件退職は申請人Aにとって不本意なものであり、合意退職とは言えず、それどころか被申請人Bが申請人に正当な理由なく賃金の切り下げ又は退職を強要するものであり、解雇権の濫用にあたる。

11. 前記10は、申請人Aが被申請人Bの事業所で労働する権利又は法律上保護される利益を侵害したものであり、民法709条に規定する不法行為を構成し、被申請人は申請人に精神的苦痛に対する慰謝料を支払う義務がある。

以上 <申請に係る添付資料等> (1) タイムカードの写し (2) 給与明細書の写し (3) 雇用契約書の写し (4) 時間外労働賃金計算書 (5) 退職届の写し (6) 時間外労働手当を請求する内容証明郵便の写し (7) 前記(6)を拒否する旨の被申請人からの回答書の写し

あっせんを経て地方裁判所へ提訴

所轄の労働基準監督署に相談し臨検になったがなぜか「指導」で終わり、過去に遡及しての時間外労働割増賃金支払の是正勧告はされなかった。
一方、労働局紛争調整委員会のあっせんでは、Aの代理人である私と、C及び会社側特定社労士との話し合いとなり、会社側はAが勝手に行った残業であるとか、残業時間中にネットを見て遊んでいたとか、管理監督者であるなどと主張し話し合いは平行線となった。あっせん委員は会社側を説得し和解に努めたが、こちら側は100万円まで譲歩したのに対し会社側はほぼゼロ回答をしてきたため”あっせん”は打ち切られた。
申請人Aは本訴の意思が固かったため私の知り合いの弁護士に依頼して福岡地方裁判所に提訴した。法廷では審理3回目で決着し和解に至った。会社側はAに200万円の解決金を支払うこととなった。

<勝因としてあげられること>

1.タイムカードという圧倒的な労働時間記録があったこと

2.ここまでのトラブルになる寸前に、Aは会社側との話し合いをIC レコーダーに録音していたこと(この録音が裁判でも証拠として採用されたこと)。

3.労働契約書を保管していたこと。

もし会社側があっせんの場で100万円で和解していれば、今回の解決金の半分で済んでいたことになります。明らかな労働基準法違反の事件が法廷での争いとなったときには、あっせんに比べて格段高い解決金となることが実証されました。

この文章は申請人Aの同意を得て掲載していますが、プライバシーに配慮し一部事実を変更しております。

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