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労働条件の不利益変更

退職強要とも言える降格や賃金切り下げの横行

悩み

毎日多くの労働相談を受けていますが、最近あったこの事例は、あまりの不条理に魂が震える思いがしました。

従業員数千人の上場企業。卸小売業。

職能給やら役割給やら名前だけはそれらしい給与制度を構築しているものの、その運用においてはでたらめです。

成果主義においても賃金の切り下げは、よほどのことがない限り行わないのが原則です。それは賃金が労働条件のうち最も重要なものであり、賃金を不利益に変更することは、雇用契約の本旨からはずれることであり、よほどのことでもない限り賃金の切り下げを行ってはなりません。

ところが平気で、人事評価の結果君は降格だ、と賃金切り下げを行っている。人事評価の客観的基準が公開され評価面談があって、不服申し立てが可能である人事制度ならそれも可能なのであるが、どうもまったくそうではないらしい。

外部コンサルタント作成による評価の基準はあるものの、末端の管理職までそれが浸透していない。評価シートはなく、あるのは目標管理シートだけである。目標管理シートの目標はといえば上司からの無理難題な課題の押しつけであった。

評価面談は一度もなされていない。否応なく評価結果だけが文書で通知されるのだそうだ。

到底達成できそうもない目標を設定させ、できなかったから貴方は最低のE評価です、とやっている。これが、上場企業の人事部のやることか、と呆れてしまいます。

(こういう制度を支援したコンサルタントも大罪です。外部コンサルが入って人事制度を変えたとたんに社内が疑心暗鬼の雰囲気に変わってしまってトラブルが絶えなくなったという相談がよくあります。)

ふつうの人間だったら誰でもそれは理不尽だ、とわかるはずだが、組織全体がマヒしてしまっているのかもしれない。会社を批判する人間はつぶされる、から誰も何も言えない。

そんな企業に誰がした。トップは誰だ。世襲制で3代目の坊ちゃん社長か。やっぱりね。

坊ちゃん社長ならまだいいほうです。たたき上げの執行役員が社長に忠告してくれるはずです。

一番困るのは、経営数字だけしか目に入らない業績第一主義の社長。

たとえば銀行出身の経理部長から「社長、50歳以上の従業員の賃金が高すぎますよ。リストラして解雇するか、人件費カットしないと利益が残りませんよ」などと言われて「そうか、そうか。中年社員は働きが鈍くなっているからね。辞めるように働きかけないとね」。

そこには、従業員は企業存続の道具であるとの思想が見え隠れする。だれでもよい。安い賃金で働いてくれれば。長年の功労もへったくれもない。

労働組合は?と言えば、社内レクレーションの開催程度しか機能していません。。。

集団提訴しかなかろう、と私はアドバイスしました。

しのづか似顔絵 労働条件の不利益変更には、次のような要件を考慮して総合的な判断が必要とされています。
■変更によって被る従業員の不利益の程度
■変更との関連でなされた他の労働条件の改善状況
■変更の目的と経営上の必要性
■労働組合・労働者との交渉の経過
■他の社員の対応
■当該労働条件に関するいわば世間相場
これらの要件を満たしていない場合は、使用者の権利の濫用で無効となる可能性が高いでしょう。

配置転換を理由にした不当な賃金切り下げ

傷病などにより労働能力が全般的に低下、又は一部喪失した場合に、賃金切り下げが可能かどうか。

原因が私傷病である場合に限定して考えてみても、賃金の切り下げは不当な場合は多い。業務災害によるものであり本人に起因するものでない場合なら、なおさら賃金減額には高度の合理性が必要となる。

職種や業務内容を限定しないことがほとんどの我が国の雇用契約であれば、一部の労働能力低下又は喪失があったとしても、他の職種や業務に従事させれば就労可能である場合には、解雇ができないし、かつ、賃金の切り下げもできないと解するのが適切である。

職務給制度を採用し、職種や職務ごとに賃金が決定されるのなら、他の職務に配転された時点で賃金額の変更には合理性があろう。しかし、わが国の賃金制度は一部業界を除いて、職能資格等級制度により能力の伸長とともに賃金が上昇するので他の職務に配転されたとしても賃金には影響しない制度になっている。あるいは小規模企業の場合には、経営者の独断と偏見による賃金決定が圧倒的に多い。

職務給制度に基づくものでない限り、職種の変更を理由として強制的に賃金を切り下げることは事実上不可能であるといえよう。

強制的な賃金切り下げではなく、協議による切り下げなら容認できる場合もある。労働者の自由意思による合意が得られた場合である。しかし、ほとんどの場合が、経営者の圧倒的力関係を背景にした協議に終始することが多い。

労働者がたとえ、賃金切り下げに合意し同意書にサインした場合であっても裁判においてそれは覆されている。背景や事情等を勘案して労働者が真に納得してサインしたとは考えられないとして無効とされている。

労働条件の不利益変更、中でも賃金の切り下げはそれほど難しいものであることを理解してほしい。

最近、一部上場企業の人事部でもこうした判例法理の理解がないためか、不当な賃金減額を強行しているようです。実に情けないと思います。

たいていの賃金切り下げは、無効

賃金を大幅に切り下げられたが納得がいかない、という相談が最近多いです。

中には15万円も下げられたという営業部長からも。一般社員でも5〜6万円という話はザラです。

なにやら人事裁量権を盾に取り、労働法を見当違いしている経営者が多いのではないですか。 というか労働法は横に置き、従業員は何も知らないから何とか丸め込んでおこう、という経営者がほとんどであろうと思います。

賃金切り下げには基本的に当該労働者の同意が必要であることを認識しておくことが重要です。しかしたとえ同意があったといえど、従業員の真意に基づく意思表示がある場合でなければその同意は無効とされています。力関係が圧倒的に上位である労使関係においてはたとえ同意書があってもそれが無効とされた判例もあります。

同意が必要ではなく企業が賃金切り下げを強制できる場合とは、就業規則、つまり賃金規定や人事評価規定等を正当な手続きを経て改定し、公開し、なおかつその改定の手続きにおいて代償措置や経過措置が整っている場合において、その規定に基づき、客観的事実に基づいて人事考課が行われた結果、賃金が切り下げられた場合に限られます。

企業の経営権や人事裁量権を限度を超えて認めることとなると、労働基準法24条の賃金の全額払いの原則を曲げることになり、「今月は業績が悪いので2割カットでがまんして」、というとんでもないことになります。

結論として、労基法24条の趣旨から、賃金の切り下げは認められません。ただし、その賃金を決定した当時の事情と現状の事情とがやむをえない事情として認められるときは、賃金切り下げもやむを得ない、ということを主張することも可能でしょう。(参考;日本法令、河本毅「労働紛争解決実務講義」)

しかし、この「事情変更」の法理は、簡単に認められるとは考えられません。

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